Baatarismの溜息通信

政治や経済を中心にいろんなことを場当たり的に論じるブログ。

韓流と円高の意外な関係

俳優の高岡蒼甫氏がTwitterで、フジテレビの韓流「押しつけ」を批判したことをきっかけに、フジテレビへの批判が強まり、8/7には抗議デモも行われる事態になっています。
ただ、このような「韓流批判」については、フジテレビの押し付けがましいマーケティングに対する批判と、韓国そのものに対する批判が入り交じっているように思います。後者の中には、健全なナショナリズムだけではなく、民族差別的な主張も見受けられるので、素直に支持するのがためらわれる面もあります。


さて、このフジテレビ批判について、『マンガ嫌韓流』の著者である漫画家・山野車輪氏が面白い意見を言っています。

──おつかれさまでした。まずはデモのご感想を。


山野氏(以下、山野) 人数が多かったのに驚きました。道路の反対側から見た個人的な印象では、300人から500人くらいはいたように見えましたね。その後、ネットを見ると、2,000人くらいいたという情報もありましたし。主催者とすれば成功と言えるんじゃないでしょうか。


──ただ、Twitterを拝見する限り、山野さんは今回の騒動に懐疑的なようですが。


デモに集まった数は主催者発表によると2,500人(約500人と報じたメディアも)。
山野 まぁ、フジテレビが韓国のコンテンツを使うのは、安くてそこその数字が取れるという経営的な判断からだと理解してます。もし韓国コンテンツを排除したいのであれば、それに代わる、安くてそこそこの数字が取れるコンテンツの代案を出さないといけないと思うんですが、それが今回ないですよね。単にデモをするだけでは建設的ではないように思います。


『マンガ嫌韓流』の作者・山野車輪がお台場の「嫌韓デモ」に首をかしげる理由とは - 日刊サイゾー 『マンガ嫌韓流』の作者・山野車輪がお台場の「嫌韓デモ」に首をかしげる理由とは - 日刊サイゾー



つまり、フジテレビにとって韓流はコストパフォーマンスの良いコンテンツだということです。フジテレビも営利企業ですから、国内制作のドラマや音楽よりも韓国制作の方がコストパフォーマンスが良いのなら、当然そっちを使うでしょう。


さて、それではなぜ韓流はコストパフォーマンスが良いのでしょうか?
昨年、僕は韓国企業の強さの理由として、円高・ウォン安の為替レートを指摘しました。*1


韓国企業はなぜ強いのか? - Baatarismの溜息通信 韓国企業はなぜ強いのか? - Baatarismの溜息通信


また、円高の原因は日本がデフレであるためだと説明しました。


円高雑感 - Baatarismの溜息通信 円高雑感 - Baatarismの溜息通信


これらの話は韓流のコストパフォーマンスの良さを説明することもできます。つまり韓国企業が好調なのも、韓流をテレビ局が放送するのも、円高・ウォン安とその背景にある日本のデフレが大きな原因であると思います。


少し前まで、円高の原因はアメリカの債務問題であるという解説が報道されていましたが、それが与野党の合意で解決した後になっても円高が続いています。ということは、この説明は間違いだったということになります。本当の原因は、下の記事で高橋洋一氏が解説しているように、日銀が金融緩和を渋り、円の供給量を増やさないからでしょう。


米債務問題が解決してもなぜ円は強いのか 円高・株安の責任は政府・日銀の怠慢にあり|高橋洋一の俗論を撃つ!|ダイヤモンド・オンライン 米債務問題が解決してもなぜ円は強いのか 円高・株安の責任は政府・日銀の怠慢にあり|高橋洋一の俗論を撃つ!|ダイヤモンド・オンライン


つまり、フジテレビが韓流ばかり取り上げるのも、その根本にある原因は、日銀が円の量を増やさないからだということになります。円安になって韓流コンテンツの価格が上がれば(言い換えれば国内制作のコンテンツの相対的な価格が下がってくれば)、フジテレビももっと国内のコンテンツを使うようになるでしょう。
だからフジテレビで抗議デモをする人は、その帰りに日本橋本石町に寄って、日銀に対して「円高やめろ」「デフレやめろ」のデモをすれば、より効果的ではないでしょうか?

*1:当時から比べるとウォンは上昇しましたが、同時に円も上昇してますので、円高・ウォン安の傾向は変わっていないと言えるでしょう。