Baatarismの溜息通信

政治や経済を中心にいろんなことを場当たり的に論じるブログ。

韓国でiPhoneが発売されない理由

今日はAppleの携帯電話iPhone 3Gの発売日で、世界中で行列が出来ているようです。
このiPhone 3Gは世界の多くの国で発売されますが、Appleが公表している発売国を見てみると、中国、台湾、韓国といった、ITが普及しているはずのアジア諸国で発売されないのが気になります。


このうち、中国ではAppleと携帯キャリアの交渉が行われているようですが、未だ締結には至ってないようです。

2008年7月6日、通信信息報によれば、3G対応iPhoneを発表したばかりの米国アップルコンピュータ社が、中国初のアップル直営店を北京市の繁華街「三里屯」に出店することを明らかにした。


関係者によれば、アップルの直営店は北京市の三里屯Villageに出店され、7月19日のオープンが予定されている。中国市場進出に際し、当初は中国移動通信(チャイナモバイル)とアップル社の間で交渉が行われていたが、交渉が決裂。その後は中国聯通(チャイナユニコム)との交渉や、年内の3G 対応iPhoneの中国本土投入が噂されていた。


アップル社がどのキャリアと手を組むのか未だ明らかにされていないが、中国移動の王建宙(ワン・ジエンシェン)CEOはiPhoneの中国市場投入について「最大の障壁はすでに解消された」と話しているという。

<iPhone>中国展開迫る?携帯電話市場、再編か―中国 - レコードチャイナ



また、台湾では一見発売されていないようですが、フライング入手したという報道もあるので、実際には発売されているのかもしれません。対中関係に配慮して、Appleのページでは発表できなかったのかもしれませんね。

2日前の欧州・米国(BGR)に続いて台湾でも香港版 (繁体字) iPhone 3Gのフライング入手が報告されています。黒の16GBをピアノのうえに置いた接写多数とSIMトレイ、動画まで公開しているのは台湾の携帯販売業者(らしい) ePrice。ビデオは初代iPhoneiPod touchと変わらない音楽再生機能ばかりであまり意味がありませんが、とりあえず続きに掲載しておきます。

iPhone 3G 台湾でもフライング & 開封 - Engadget 日本版



これに比べると、韓国の場合、もっと状況は深刻なようです。

■韓国でiPhoneが発売しにくい理由


 日本ではソフトバンクモバイルiPhoneを発売することになったが、韓国ではどこのキャリアからいつ発売されるか、まだ決まっていない。それには理由がある。


 韓国政府はモバイルインターネットが使えるすべての端末にWIPI(Wireless Internet Platform for Interoperability)という、韓国の国策事業として開発した独自のOSの搭載を義務付けている。このOSを追加することで端末の値段が高くなってしまう、または機能が制限され端末のインターフェースを変更しなくてはならない、といった理由から、海外の端末メーカーは韓国での販売をためらってきたのである。


 WIPIは韓国の携帯電話端末市場を保護する役目があった。ところが、韓国がカナダとFTA自由貿易協定)を締結することになり、これが崩れかけようとしている。カナダのリサーチ・イン・モーション(RIM)のブラックベリーはモバイルインターネットではなく企業向けのイントラネットを使うPDAということで、例外的にWIPIを搭載しなくても韓国での販売が認められた。SKテレコムが今年8月から法人顧客向けにブラックベリー端末の提供を始める。


 5月21〜22日にソウルで開催された韓米通商懸案会議で、米国もこの問題を貿易交渉のテーブルに持ち出した。米貿易代表部(USTR)の韓国担当者は、ブラックベリーがWIPIの搭載を免除になった理由と条件を詳しく確認したという。


 法律では、電気通信設備の相互接続基準告示により、2005年4月1日以降に韓国で新たに出荷されるすべての端末にWIPIを搭載しなくてはならないことになっている。しかし2007年にはモバイルインターネットの機能がない端末には搭載しなくてもよいと規定を変え、ブラックベリーの件で発言が二転三転するなど韓国政府の対応は揺れている。端末業界では、WIPI搭載はいずれ廃止され、韓国の端末市場も自由化されると見込まれている。

日本経済新聞



この記事にあるように、韓国政府がモバイルインターネットが使えるすべての端末にWIPIという韓国独自のOSの搭載を義務づけていることが、iPhoneの韓国発売の障害となっているようです。iPhoneOS Xを捨ててWIPIを採用することは絶対にないですから、この規制が廃止されない限りiPhoneの韓国発売はあり得ないことになります。
「端末業界では、WIPI搭載はいずれ廃止され、韓国の端末市場も自由化されると見込まれている。」とは書いてありますが、その時期の見通しが立っているわけではないようですから、当分、韓国のユーザーはiPhoneを使うことができないままなのでしょう。


この韓国でのiPhoneの件は、国家が下手な規制を打ち出すと、消費者が大きな不利益を被るという好例ですね。こんな規制を続けていると、世界中の携帯メーカーが韓国市場を無視してしまうと思うのですが、こんなことで良いのでしょうかねえ。
韓国はサムスンやLGといった世界的携帯メーカーを擁してますが、その利点は韓国政府の失策によって帳消しになっているようですね。

7/14追加

台湾のiPhone発売については、こんな記事がありました。台湾ではまだ発売されていないようですね。交渉中と言うことは、中国と似た状況なのでしょう。
フライング入手については、香港から非公式に入手したのでしょうか?

 7月12日、外電報道によれば、台湾通信事業者の中華テレコムは「アップル社とiPhone 3Gの台湾市場投入について、交渉を展開している」と、中華テレコムスポークスマン、石木標氏は公表している。
 なお、同氏は交渉の詳細、中華テレコムの「iPhone 3G」市場導入の日程を明らかにしていない。
 アップルは7月11日より、世界22カ国・地区で「iPhone 3G」を発売しており、2008年内に70カ国・地区に販売を拡大する計画。

http://www.chinapress.jp/mobile/13030/



あと今回発売された香港の情報もありましたね。SIMロックがかかっていないとは、うらやましい限りです。

香港のiPhone 3Gは“SIMロックなし”――香港で人気の理由は


 香港では、注目度の高い端末の販売例は多く、発売と同時にケータイショップや家電量販店で即完売になる端末も少なくない。2007年には“ブランド製品”として大きな注目を集めた「The PRADA phone by LG」も販売されている。しかしiPhone 3Gは、こうした端末よりもひときわ注目度が高く、販売イベントも大きな盛り上がりを見せていたように感じる。


 理由の1つは、iPhoneの香港における正規販売が待ち望まれていたことだ。米国で初代iPhoneが発売された直後から、香港では並行輸入品として初代iPhoneが販売されていたが、そのままでは利用できないことから、ハードウェアの改造やソフトウェアによるロック解除などを行ったものが流通していた。これまでは、“正規販売ではない”という理由から購入をためらう人が多かったわけだ。


 2つ目は、販売モデルの違いから、香港での正規販売がいつになるかが不透明だったことだ。他メーカーの携帯電話であれば、香港以外で発売されたモデルでも、いずれは香港で正規販売されることがほとんどだ。これはGSMW-CDMA市場では、端末メーカーが販売するのが主流で、通信事業者の意向に関係なく、メーカー自らが端末を販売できるからだ。


 しかしiPhoneは、アジアやヨーロッパで主流ではない「通信事業者モデル」を採用しており、香港での正規販売を実現するためには、香港の携帯事業者がAppleと提携する必要があった。こうしたビジネスモデルの違いから、“香港での販売は当分ない”と考えられていたが、iPhone 3Gについては、HutchisonとAppleが販売契約を結んだことで販売が実現。“待ちわびていた製品がようやく正規品として登場した”ことも、人々を熱狂させた理由の1つだろう。


 さらに、抽選による限定販売方式を採用したことも、イベントを盛り上げるのに一役買った格好だ。幸運な当選者はどんな人なのか、他の人に先駆けて iPhone 3Gを入手した人の気持ちは――といったことは、メディア関係者だけでなく香港人の間でも話題になっていたはずだ。


 そして香港で販売されるiPhone 3Gには、SIMロックがかかっておらず、Hutchisonの契約で購入しても、他社のSIMカードを入れてそのまま利用することが可能なのだ。香港では、携帯事業者が販売する端末も、メーカーが直接販売する端末も同等品であり、いずれもSIMロックがかかっていない。


 最近では、事業者で契約すると端末を割引価格で購入できるような買い方も登場し、iPhone 3Gも契約内容次第では無料で入手できる。“Hutchisonと契約してiPhoneを安価に入手し、契約したSIMカードは別の端末で家族などに利用してもらい、自分は現在利用している他の事業者のSIMカードを利用する”――といったことも可能なわけだ。こうした使い方をしても、事業者側からのおとがめのようなものは一切ない。このように、魅力的な製品が契約の仕方によっては安価で購入できるのも、iPhone 3Gの人気の1つになっているようだ。

香港でも“iPhone 3G祭り”:香港は“抽選販売”のiPhone 3G、熱気に包まれたイベント会場 - ITmedia Mobile