Baatarismの溜息通信

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増税オールスター内閣の戦略は?

菅内閣内閣改造は、事前報道では仙谷官房長官と馬淵国交相の交代が焦点になっていましたが、実際の改造では、立ち上がれ日本を離党した与謝野馨氏の経済財政相就任や藤井泰久氏の内閣官房副長官起用など、増税派の政治家が多数起用される結果となりました。産経新聞はこの布陣を「増税オールスターズ」と皮肉っています。

 菅直人首相は14日夜発足させる菅第2改造内閣で、与謝野馨財務相を経済財政担当相に、藤井裕久財務相官房副長官に据え、消費税増税論者による「増税オールスターズ」を作った。税制・社会保障の一体改革にかける首相の意気込みの表れだが、党内多数派の小沢一郎民主党代表や鳩山由紀夫前首相に近い議員を引き続き冷遇したため、菅首相の政策推進力は著しく減退しそうだ。


【内閣改造】「増税オールスターズ」の布陣 反小沢路線も鮮明 人材不足が露呈 (1/2ページ) - MSN産経ニュース 【内閣改造】「増税オールスターズ」の布陣 反小沢路線も鮮明 人材不足が露呈  (1/2ページ) - MSN産経ニュース

特に財務省の考え方を体現する与謝野氏が政権に入ったことで、この内閣は完全に財務省主導となったとみなしてよいでしょう。与謝野氏は長年所属した自民党や、自ら立ち上げたたちあがれ日本を裏切ってまで、消費税増税という財務省路線に忠実に行動したわけですから、そんな人を起用するというのは極めて分かりやすいシグナルです。


このような増税路線が本当に財政再建につながるのか、1997年の消費税増税の時のように不景気による税収減や財政支出増で財政を悪化させてしまうのではないかという心配は非常に大きいです。特に、以前の記事でも述べましたが、今回も菅総理財務省の説明だけを聞いて決定しているように思うので、橋本内閣の時と同様、増税路線に都合の悪い情報は入っていないのでないかと懸念しています。


消費税増税は本当に税収を増やすのか? - Baatarismの溜息通信 消費税増税は本当に税収を増やすのか? - Baatarismの溜息通信


それに加えてこの増税路線で気になることが一つあります。それはねじれ国会への対応が全く考えられていないように見えることです。
ただでさえ、民主党参院で数が足りず、過半数確保に四苦八苦しています。それに加えて、党内では反小沢路線で党内を分裂させ、自民党たちあがれ日本を裏切った与謝野氏の起用で野党の反発を招くなど、消費税増税どころか予算関連法案成立も危ぶまれる状況になっているはずです。


そんなことを考えていたところ、ちょっと衝撃的なニュースが入ってきました。

共同通信世論調査で、消費税率引き上げに賛成は54・3%で、反対の43・3%を上回った。


http://www.topics.or.jp/worldNews/worldFlash/2011/01/2011011501000338.html



昨年の予算編成報道では、財政危機を煽る報道がされていましたから、それで消費税増税が必要だと感じた人も多かったのでしょう。こういう報道の出処ももちろん財務省なのですが。


ただ、これまでは昨年の参院選の結果でも示されたように民意は消費税反対だと思っていたのですが、もしここが賛成多数になるのであれば話が違ってきます。
自民党の谷垣総裁や石破政務調査会長はもともと消費税増税賛成であり、自民党離党前の与謝野氏とも近い関係でした。とはいえ、与謝野氏が自民党を除名されてたことでそのパイプはすでに失われ、現在は自民党は与謝野氏起用を激しく批判しているのですが、それでも民意が消費税増税賛成になってしまうと、それだけの理由で消費税の協議を拒否することもできず、菅政権との協調路線に転じてしまうかもしれません。そうなれば与謝野氏の問題もうやむやになり、菅政権は衆参両院で小沢氏や社民党国民新党に頼らずに衆参両院で多数を確保する事もできるでしょう。
まあ、ここまでうまくことが進むかどうかは分かりません。本当に民意が消費税増税支持に転じたかはまだ不透明ですし、そうなっても僕の推測に反して自民党が菅政権に協力しない可能性もあります。
ただ、財務官僚や与謝野が菅総理に吹き込んだ話はこんなところではないかと思います。菅総理がこの内閣改造で妙に強気なのも、こういう話を信じているためだと考えれば納得できます。菅総理は消費税増税で政権の支持を回復する可能性にかけたのでしょうね。もはやデフレ脱却よりも消費税増税を優先していることは明らかです。


ただ、僕はこの時期での消費税増税は、1997年と同様、景気を大きく落ち込ませて経済を大混乱に陥れ、特に若年層の失業や不正規雇用を増やす可能性が高いと思います。就職氷河期は、氷河期どころかスノーボールアースになってしまいかねません。だから何がなんでも消費税増税を阻止したいのですが、その鍵はやはり民意なのでしょう。


財務省増税キャンペーンについては、例えば年始にも紹介した高橋洋一氏のような強力な反論もあります。これ以上の景気悪化を防ぐためにも、財務省発の財政危機を煽る報道に騙されて消費税増税を受け入れてしまうことのないように、気をつけたいのものです。


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