Baatarismの溜息通信

政治や経済を中心にいろんなことを場当たり的に論じるブログ。

菅政権のトンデモな二人

 新首相に就任する菅直人財務相は4日、内閣・民主党役員人事に着手した。

 官房長官・副総理に仙谷由人国家戦略相、党幹事長に枝野幸男行政刷新相を起用する方向だ。菅氏の後任の財務相には野田佳彦財務副大臣を昇格させ、仙谷氏の後任の国家戦略相には荒井聰首相補佐官を充てる。罷免された社民党の福島党首が務めていた消費者相には、蓮舫参院議員を起用する考えだ。


民主党幹事長に枝野氏、官房長官に仙谷氏 : 政治 : YOMIURI ONLINE(読売新聞) 民主党幹事長に枝野氏、官房長官に仙谷氏 : 政治 : YOMIURI ONLINE(読売新聞) 民主党幹事長に枝野氏、官房長官に仙谷氏 : 政治 : YOMIURI ONLINE(読売新聞) このエントリーをはてなブックマークに追加



すでに報道されている通り、鳩山総理と小沢幹事長が辞任した後、菅直人氏が民主党代表に選出され、菅政権が発足することになりました。菅次期総理は官房長官仙谷由人氏、民主党幹事長に枝野幸男を起用する方針のようです。
しかし、政府と党の要のポストに付くことになったこの二人、経済政策については非常に不安が大きい人物です。


まず枝野氏についてですが、実は彼は以前に利上げで景気回復をめざすという、経済学的にはありえない政策を主張したことがあります。なぜありえないかについては、田中秀臣さんの記事で詳しく解説されています。


本当に社会に害なす暴言とは?(民主党枝野幸男議員の朝ナマ発言を考える) - Economics Lovers Live 本当に社会に害なす暴言とは?(民主党枝野幸男議員の朝ナマ発言を考える) - Economics Lovers Live 本当に社会に害なす暴言とは?(民主党枝野幸男議員の朝ナマ発言を考える) - Economics Lovers Live このエントリーをはてなブックマークに追加


しかも中央銀行による単なる利上げではなく、貸出金利は上げずに預金金利だけ上げるべきだという主張でした。これは政府が金利を直接規制する方法で、金利自由化が進んだ1980年代以前の政策に逆戻りする政策だと言えるでしょう。
この件については以前にこのブログでも取り上げたことがあるのですが、このような政策を実施した場合、銀行は収益の悪化を防ぐために融資や預金を抑制するか、さもなければ逆にリスクの高い融資や投資を活発化させて利益を増やそうとするかのどちらかになるという結論になりました。もし前者になればマネーストック(マネーサプライ)が急減して不況がよりひどくなりますし、後者になればマネーゲームが加熱した挙句、不良債権が大量に生まれるでしょう。いずれにせよ、こんな方法で景気が回復するはずはありません。


自民党利上げ派と民主党利上げ派の違い - Baatarismの溜息通信 自民党利上げ派と民主党利上げ派の違い - Baatarismの溜息通信 自民党利上げ派と民主党利上げ派の違い - Baatarismの溜息通信 このエントリーをはてなブックマークに追加
貸し渋りと貸し過ぎを分けるもの - Baatarismの溜息通信 貸し渋りと貸し過ぎを分けるもの - Baatarismの溜息通信 貸し渋りと貸し過ぎを分けるもの - Baatarismの溜息通信 このエントリーをはてなブックマークに追加


次に仙谷氏ですが、最近はこんな発言をしています。

 [東京 13日 ロイター] 仙谷由人国家戦略担当相は13日の閣議後の会見で、デフレ克服のための財政出動に関連して、数十兆円規模の需給ギャップを解消することによるデフレ脱却論は、経済にとってマイナスの影響が大きいとの認識を示した。

 また、6月にまとめる中期財政フレームで消費税を含む抜本税制改革の扱いについて「中期の問題として、何らか触れざるを得ない」と述べた。ただ、具体的な消費税の引き上げ幅について「そこまで出るかどうか」とも語り、定性的な文言で盛り込む考えを示唆した。

 デフレ解消と財政出動の考え方について、仙谷担当相は「非常に単純な経済学では、現在20兆円の需給ギャップがあるとすると、需給バランスさせるという議論になる可能性があるが、今はそういう時代ではないとの基本認識をもっている」と指摘。中期財政フレームなどで財政規律を検討する一方で、需給ギャップ解消論による手法では「マイナスの影響が大きい」と述べた。


需給ギャップ解消による脱デフレはマイナス=仙谷国家戦略相 | ビジネスニュース | Reuters 需給ギャップ解消による脱デフレはマイナス=仙谷国家戦略相 | ビジネスニュース | Reuters 需給ギャップ解消による脱デフレはマイナス=仙谷国家戦略相 | ビジネスニュース | Reuters このエントリーをはてなブックマークに追加



需給ギャップ解消による脱デフレはマイナスという認識ですが、それだと財政政策も金融政策も否定されることになってしまいます。世界中のほとんどの国では需給ギャップが大きくなって不況になれば、金融政策や財政政策を実施するのですが、この当たり前の政策を否定するとは驚きです。


この発言については、高橋洋一氏が激しく批判しています。需給ギャップを放置すると言うことは、デフレや不況や失業を放置することですから、批判されるのも当たり前でしょう。

 実際に、仙谷由人国家戦略相は13日、数十兆円規模の需給ギャップを積極政策で埋めると経済にとってマイナスの影響が大きいとの認識を示し、中期財政フレームでは逆に増税を盛り込むと発言した。

 これは、普通の経済学ではまったく考えられない「非常識」だ。知り合いの外国人はたった一言「クレイジー」。どこの国でも、需給ギャップ(需要と供給の差)があると失業やデフレが悪化するので、財政・金融政策を積極的に活用して早く需給ギャップを埋め、安定成長経路に乗せようとする。これは最近の金融危機後で世界各国で行われた政策をみてもすぐわかる。

 仙谷国家戦略相のいうように、需給ギャップを放置したまま増税になると、需給ギャップは拡大し失業はさらに増える。需給ギャップが拡大するのでデフレは深刻化し、円高になってスパイラルに入る。さらに税収は減少し、最後は国家の破綻になるだろう。

 仙谷国家戦略相もしくは財務省は日本初となるノーベル経済学賞の受賞に値する新経済理論を見つけたのだろうか。そうでなければ、これは、アインシュタイン相対性理論の誤りを見つけたと同じ、俗に言う「トンデモ」話である。こんな話を閣僚がすると、日本がマーケットで「おもちゃ」にされるだけだ。


【激震2010 民主党政権下の日本】需給ギャップ放置し増税目指す仙谷氏の「トンデモ」新経済理論 - 政治・社会 - ZAKZAK 【激震2010 民主党政権下の日本】需給ギャップ放置し増税目指す仙谷氏の「トンデモ」新経済理論  - 政治・社会 - ZAKZAK 【激震2010 民主党政権下の日本】需給ギャップ放置し増税目指す仙谷氏の「トンデモ」新経済理論  - 政治・社会 - ZAKZAK このエントリーをはてなブックマークに追加



また、ロジック体操(第一)のid:bunsekijakushaさんが仙谷氏の発言をまとめていますが、これによると円安批判、低金利政策批判、消費税増税、清算主義と、普通に考えれば景気に悪影響を与える政策ばかり主張しているようです。ただ、発言にかなりブレも見られるため、もしその逆の発言をしたとしても、それが本心かはわからず、信用できない人でもありますね。


衆議院議員仙谷由人(63歳)の為替介入についての過去の言動 - ロジック体操(第一) 衆議院議員仙谷由人(63歳)の為替介入についての過去の言動 - ロジック体操(第一) 衆議院議員仙谷由人(63歳)の為替介入についての過去の言動 - ロジック体操(第一) このエントリーをはてなブックマークに追加

仙谷由人大先生の金利についての発言をおさらいしておこう! - ロジック体操(第一) 仙谷由人大先生の金利についての発言をおさらいしておこう! - ロジック体操(第一) 仙谷由人大先生の金利についての発言をおさらいしておこう! - ロジック体操(第一) このエントリーをはてなブックマークに追加

仙谷由人氏は「現実路線」に目覚めたのか(追記あり) - ロジック体操(第一) 仙谷由人氏は「現実路線」に目覚めたのか(追記あり) - ロジック体操(第一) 仙谷由人氏は「現実路線」に目覚めたのか(追記あり) - ロジック体操(第一) このエントリーをはてなブックマークに追加


よりによってこんなトンデモ政策を信奉する二人が菅政権の中枢に座ることになってしまったので、今後の経済政策が非常に不安です。来年には消費税増税か利上げによって、日本経済がさらなる不況に落ち込むのかもしれませんね。消費税増税社会保険料値上げによる「9兆円の負担増」で日本経済が危機に陥った1997年や、ゼロ金利解除で景気回復が台無しになった2000年、2006年を繰り返すことになるのかもしれません。